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トマトの「リコペン」と「リコピン」どっちが正解?

2018年10月2日

トマトのリコピンとリコペンどっちが正しい?

知っておきたい


トマトの成分名は「リコピン」でなく「リコペン」が正しい

昔「カロチン」「カロテン」で似たような騒動があった

リコペンが「リコピン」になってしまったストーリー(仮説)4コマ漫画つき

 

ここ最近、トマトの持つ抗酸化作用が注目されています。トマトダイエット、なんてものも流行りましたね。

真っ赤なトマトの持つパワーの秘密は、赤い色素「リコピン」!なんだか可愛らしい名前ですよね。

 

……ちょっと待ってください!「リコピン」じゃなくて「リコペン」という呼び方もあるんです。

テレビなどでは「リコピン」が優勢ですが、「リコペン」という呼び方も確かに存在します。

あのWikipediaにも「リコペンで載っています。

 

二つの呼び方がありますが、どちらも同じ成分・物質を表す言葉です。

一体、「リコピン」と「リコペン」どっちが正しいのでしょうか。

そんな、しょうもないちょっとした疑問を解決いたします!

化合物の名付け方には決まりがある

そんなのどうでもいいと思ったそこのあなた。

化合物の名前のつけ方には、ちゃんとした決まりがあるんです。

 

国際純正・応用化学連合(IUPAC・アイユーパック)という組織があります。

IUPACは、世界中で化学の研究活動がスムーズにできるよう、化学に関するいろんな決まりを定めています。

その中心となる取り決めが、IUPAC命名法と呼ばれる、化合物の正式な命名法です。

国際的な取り決めなので、これは英語での名付け方になります。

 

一方、その国際的な命名を日本語(カタカナ語)にする際の規則も定められています。

日本化学会から『化合物命名法』という冊子が出版されています。

英語の名前からカタカナ語に訳す際の決まりがいろいろとあるのですが、基本的に「ローマ字読み」をすることになっています。

ココがポイント

化合物名を英語から日本語にする時は、ローマ字読み

 

正式な決まりに従うと「リコペン」が正解だった!

トマトの話に戻りましょう。

トマトの赤い色素成分は、英語で"lycopene"です。英語読みは「ライコピィーン」みたいな感じです。

(この名前はIUPAC名でなはなく、慣用名と呼ばれる命名なのですが、詳しい話は置いておきましょう。)

 

この、"lycopene"をカタカナに訳す時の決まりは、「ローマ字読み」でしたね。

つまり日本語での正しい読み方は、

「リコペン」

となります。

 

語尾の「エン」にもしっかりと意味が

英語で"lycopene"、日本語でリコペン。語尾にエン(ene)がつきます。

この「エン」は炭素-炭素原子間の二重結合を持つ化合物に与えられる語尾です。

リコペンも二重結合を持つために、英語でeneをつけて"lycopene"と名付けられました。

実際にリコペンの構造を見ると、これでもかというほど二重結合(二重線になっている部分)があります。

リコペン(リコピン)の構造と共役二重結合

ちなみに、この二重結合が一つおきにたくさん繋がっている(共役・きょうやくといいます)のがリコペンの構造で重要な点です。

図中の赤い四角で囲んだ、二重結合が共役した構造を持つため、リコペンは赤い色をしており、また抗酸化作用を持っています。

 

「リコピン」だと、"lycopene"のeneを「エン」でなく「イン」と読んでいることになります。

ですがeneは、「エン」と読むことになっています。

-エン(-ene)は、有機化合物のIUPAC命名法の規則に基づいた時、-C=C-基が最も優先される場合に、化合物名の語尾に付けられる接尾辞である。

引用:エン (化学) - Wikipedia

ということで、やはり「リコペン」という呼び方が、日本語では正しいことになりますね。

ココがポイント

正式な化合物の命名に従うと、どう考えても「リコペン」

 

なぜ正式名称「リコペン」でなく「リコピン」と呼ばれているのか?

あのトマトの成分は、「リコペン」という名前が正しいことがはっきりしました。

しかし、世の中のトマト製品は「リコピン」表記ばかりです。

どうしてこうなってしまったのでしょうか。

 

残念ながら、すっかり「リコピン」が世間に浸透してしまった今では、その経緯はよく分かりません。

ですが、実は同じような事件?が過去にあったんです。そこからヒントが得られます。

それは、「カロチン」「カロテン」

 

「カロチン」が「カロテン」に訂正された

にんじんやモロヘイヤなどに豊富に含まれるカロテン。

この「カロテン」ですが、昔は「カロチン」でした。

 

呼び方が変わったのは、ちょうど2000年のこと。

食品に含まれる成分のデータをまとめた『日本食品標準成分表』が2000年に改訂され新しくなりました。

この中で以前は「カロチン」と表記されていたのが、「カロテン」表記に変わります。

 

カロテンは英語で"carotene"、やはりeneがつきます。

カロチンからカロテンへの変更は、本来の正式な読み方に従う結果だったのですね。

それまでの「カロチン」は、化合物の命名としては、間違った呼び方だったことになります。

 

リコペンもカロテンの一種

カロテンとリコペン。語尾に「エン」がついていて似てますね。

実は、リコペンはカロテンの一種なんです。

「カロチンがカロテン」に訂正されたということは、同じグループに属する言葉「リコピン」も、本来は「リコペン」であるべきなのです。

 

カロテンもリコペンも、語尾は「エン」でないといけないのです。

「リコピン」という呼び方は間違いで、「カロチン」と同じ過ちをしていることになります。

 

どうしてこうなったのでしょう?その経緯として、一つの仮説が浮かび上がります。

 

リコピン置いてけぼり説(4コマ漫画)

リコペンは人体にとって、必ずしも必要な成分ではありません。

一方、β-カロテンは体内でビタミンAに変わる大事な栄養素です。

 

その昔、栄養素に関する研究が広まってきた頃。重要な栄養素「カロテン」という言葉が日本に入ってきました。

しかし、"carotene"という外来語を日本語にする時、あろうことか「カロチン」と訳してしまいました。

 

その後、トマトに含まれる「リコペン」が見つかり、言葉が日本に入ってきます。

しかし「カロチン」の仲間なので、それに合わせて「リコピン」と呼ぶことにしました。

これらの言葉は広く浸透しました。

 

それから数十年が経ち、2000年。

偉い人たちは会議を開きました。

「重要な栄養素で間違った読み方はまずい。「カロテン」に変えよう」と。

こうして、「カロチン」は「カロテン」に変更されました。

 

しかし、トマトのリコペンは必須の栄養素ではありません。なので食品成分表にも載っていません。

昔に訳された「リコピン」は、今でもそのまま「リコピン」と呼ばれています。

caroteneをカロチンと訳すカロチンときたらリコピンでカロチンからカロテンにリコピンはそのまま

私にはこういうストーリーが見えてきましたが、いかがでしょうか?

 

まとめ

  • トマトの成分は本来「リコペン」と呼ばれてしかるべき
  • だがリコピンが広まってしまったので、リコペンじゃ通じないかも
  • カロチンにリコピン、歴史は繰り返される

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