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玉ねぎを切って目にしみるのを防ぐ5つの科学的方法

2019年6月20日

玉ねぎが目にしみない科学的根拠のある方法

「玉ねぎを切る」から連想することは?

そう「涙」です!

料理好きな人なら、玉ねぎが目にしみたり、涙が出た経験の一度くらいあるのではないでしょうか。一度と言わず毎回苦労している人もいらっしゃるでしょう。

そんな人たちを救いたい!

このページを開いたあなたも、同じ悩みを抱えているのでは?――そんなあなたに朗報です。迷信ではなく、科学的根拠のある「玉ねぎが目にしみて涙」が出るのを防ぐ方法を5つ紹介したいと思います。

 

玉ねぎを切っても目にしみないための科学的方法

まずは、玉ねぎを切る時に役立つ実用的な方法を5つ、紹介します。

(これらの方法は、玉ねぎが目にしみる度合いを小さくすることが予測できますが、完全に防げるものではありません。)

順番は、私のおすすめ順です。

 

玉ねぎを冷やしておく

定番のこの方法は、科学的にも「正解」。

玉ねぎの催涙成分(さいるい:涙を出させること)は揮発性があり、切った断面から気化します。その気体が目にしみます。

温度が下がれば、揮発をいくらか抑えることができます。寒いと洗濯物が乾きにくい(水が揮発しにくい)のと同じ原理ですね。

なので、冷やした玉ねぎを切り催涙成分の揮発を抑える方法が有効です。

普段から冷蔵庫で冷やしておく、切る30分以上前に冷蔵庫に入れる……冷やし忘れていた場合は、氷水で冷やすのもありです!

 

切った後も温まらないようにする

冷やして切ったからと油断してはいけません。薄切りやみじん切りにした玉ねぎは、多くの断面があります。

切った玉ねぎを、まな板の上などに広げて放置していると再び温度が上がります(もちろん室内の温度が高いほどすぐ温まります)。

断面が多い上に、再び温度が上がってしまったら?そうです。たくさん揮発します。せっかく冷やしていたのに。

切った玉ねぎを広げっぱなしにせずまとめる(切断面どうしをくっつけることで空気に触れる表面積を少なくする・全体の温度も上がりにくくなる)、密閉する(揮発したって閉じ込めておけばいい)などの工夫が考えられますね。

たくさんの玉ねぎを切る場合には、こまめに鍋やボウル、ビニール袋などにまとめるとよいでしょう。

他にも、夏なら冷房をつけるのも効果的ということになりますね。科学的に考えることで、方法は自分で思いつくことさえできるようになります!

 

換気を良くする

玉ねぎを切ると催涙成分が揮発します。この揮発そのものを防ぐのではなく、揮発しても外へ逃がすというアプローチもありですよね。

しっかり換気しましょう。換気扇を回せば、揮発した催涙成分を室内から追い出せます。空気の流れができ、あなたの手元付近に発生した気体が留まることを防げます。

もしあなたが、旦那さんに嫌気が差している奥さんなら、扇風機をキッチンからリビングに向けて回せば……

いや、なんでもありません。科学は正しく使いましょう。

 

玉ねぎを水中で切る

いいえ、ふざけていません。玉ねぎの催涙成分は水溶性(水に溶ける性質)です。水の中で玉ねぎを切ることで、催涙成分が水に溶け込み、揮発が抑えられます(不安定な成分で、水に溶けるとそのうち分解する)。

とはいえ、薄切りやみじん切りを水中で行うのは現実的ではありませんね。そこで一つ、私から現実的な提案を。

水中や流水中で、皮をむきましょう。玉ねぎの上下両端を切った後、ボウルに張った水の中、もしくは水道の水を当てながら皮をむくんです。

皮をむく時には力が入るので、玉ねぎの細胞が潰れがちです。細胞が潰れると、催涙成分がたくさん発生してしまいます(酵素反応が起こります)。

水中で皮をむくことで、切る前から涙が出てしまうことを防げるんです。嫌なことは水に流しましょう。

 

ゴーグルを着ける

「見た目がダサい」

そんなことは気にしないタイプのあなたへ。

玉ねぎの催涙成分は気体として目元まで漂ってくるので、普通のメガネをかけたところであまり効果はないかもしれません。

一方、水泳用ゴーグルのようにしっかり密閉できるものなら、「目を」催涙成分から遮断することができます。

 

しかし、これには落とし穴も。玉ねぎの催涙成分が刺激をもたらすルートは「目に直接」だけでなく、鼻や口からも届いて刺激を与えます。

目だけゴーグルで保護しても、完全に防げるわけではないんですね。(もちろん、気化した催涙成分が目に直接触れることがなくなれば、大きく刺激を減らすことができるでしょう。)

私は着けませんが、どうしても玉ねぎが苦手な方はぜひ。

ゴーグルで玉ねぎがしみるのは防げるのか

 

紹介した方法の科学的根拠

玉ねぎが目にしみないようにするための5つの方法を紹介しましたが、その科学的根拠をもう少し詳しく。

そのためにまず、玉ねぎが目にしみるメカニズムを簡単に説明。

 

なぜ、玉ねぎは目にしみるのか?原因はプロパンチアールS-オキシド

玉ねぎが目にしみる原因となっている成分は、「プロパンチアールS-オキシド」という物質です。(Sはそのまま、エスと読みます。分子内の硫黄原子のことを意味しています。)別名、チオプロパナールS-オキシド。

「玉ねぎの目にしみる成分は硫化アリル」という説明がテレビなどでもまかり通っていますが、間違いです。硫化アリルではありません

50年近く昔に明らかにされていることですが、プロパンチアールS-オキシドが原因です。硫化アリルは、プロパンチアールS-オキシドとは全く別の物質です。

 

玉ねぎを切って細胞が破壊された後、この物質の元となる物質(前駆体)である1-プロペンスルフェン酸が生じ、催涙因子合成酵素と呼ばれる酵素に触媒され異性化、プロパンチアールS-オキシドとなります。

玉ねぎ催涙成分の生成過程

まあとにかく、(プロパンチアールS-オキシドという名前は置いておくにせよ)玉ねぎを切ると催涙成分が生成するということです。

 

紹介した方法はなぜ有効といえるか?

プロパンチアールS-オキシドは、揮発性があります。なぜ玉ねぎを切った時に目にしみるかというと、その揮発性がネックとなっています。

気体になったプロパンチアールS-オキシドが、目の角膜や鼻の粘膜などに触れると、刺激をもたらします。こうして、玉ねぎを切ると目にしみるんです。

 

しみないためには、プロパンチアールS-オキシドの持つ2つの性質、揮発性と水溶性を考えることが重要です。

考えられる戦略は「揮発させにくくするか、揮発しても鼻や目に届かないように工夫する。また、水に溶かすことでも揮発を防げる。」といったところ。

今回紹介した5つの方法は「冷やす・温まらないようにする・換気を良くする・水中で皮をむく・ゴーグルを着ける」でした。プロパンチアールS-オキシドの性質や、目にしみるメカニズムが分かれば、全部説明できますよね。

 

まとめ

科学的根拠のある、玉ねぎで目がしみるのを防ぐ方法を紹介しました。

「玉ねぎの目にしみる成分は、揮発性と水溶性があるんだなー」という知識さえあれば、工夫次第で新しい方法を考えられるかもしれません。

 

最後に、本題からは逸れるのですが……全国放送のテレビ、さらには某大手食品企業のウェブサイトでも「玉ねぎが目にしみるのは硫化アリルが原因」という誤った情報が流れていることに、なんだかなーと思う私です。まあ、多くの人にとっては方法が大事であって、物質名が違ってもそこまで問題はないのかもしれませんが……

私も、なるべく正しい情報を伝えられるように心がけます。皆さんが正しい知識を知る上で、少しでもお役に立てれば幸いです。

 

参考文献等:
https://www.jstor.org/stable/24967598
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfe/16/2/16_181/_article/-char/ja/
https://www.nydailynews.com/life-style/eats/cry-chop-onion-not-article-1.2993428

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