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水の硬度の測定方法まとめ―測定キットや試験紙もレビュー!

水の硬度の測定方法まとめ―測定キットや試験紙もレビュー!

水の硬度の測定は、市販の測定キットや試験紙を使うと簡単に行えて、自由研究のテーマにもおすすめです。

この記事では、市販されている3つの測定用品を紹介し、水道水やミネラルウォーターの硬度を測った様子や結果を掲載しています。

また、最後の章では、より精度よく測定できる、数万円程度で購入可能なデジタル機器も紹介します。

水の硬度を測定する方法

水の硬度とは、水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンを合わせた濃度を、特定の物質の質量に換算して表した指標です。

日本でも普及している「アメリカ硬度」では、炭酸カルシウム(CaCO3)の質量に換算して、mg/Lを単位として(またはppmで)表されます。なお、この記事でもアメリカ硬度を用います。

水の硬度の定義や計算方法については、別の記事でイラストも用いて解説しています。

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水の硬度を自動で計算!硬度の意味や計算式の導出方法も解説

水の硬度の測定方法は、大学や研究機関で行われるような機器分析から、小規模な事業所に向く方法、個人で行える簡易的方法までさまざまです。

以下に、主な4つの測定方法を紹介します

主要な4つの測定方法
滴定法(キレート滴定法)
  • 試料に、ビュレットから滴定剤を滴下して化学反応を進行させ、反応が完結する点(当量点)までに要した滴定剤の体積から、化学量論的な計算に基づき濃度を決定する分析法。
  • 古典的方法ながら、非常に高精度で、現代でも一般的。
  • 実験器具や試薬、そして化学実験の知識が必要。
ICP分析法(ICP-MSやICP-AES)
  • ICP(誘導結合プラズマ)に試料を導入し、成分元素をイオン化させた後に質量分析を行ったり(ICP-MS)、励起された原子が基底状態に戻る際の発光スペクトルの波長や強度を測定したり(ICP-AES)する分析方法。
  • 精度がよく、極めて高感度(とくにICP-MS)であり、多元素が同時に分析可能。
  • 研究機関などにある、大型で高価な分析機器が必要。
硬度の測定キットや試験紙を用いる簡易的方法
  • 千円~数千円程度の製品がいくつか販売されており、手軽に簡易的な測定が可能。
  • 色調や色の濃さに応じた大まかな硬度を知る製品や、簡易的な滴定を行う製品などがある。
  • 個人でも扱えて、一般家庭の水道水や井戸水の測定、自由研究などにも向く。
    本記事の②章で紹介)
吸光光度法
  • 硬度成分と反応して呈色する試薬を加えてから、色の濃さ(に応じた光の透過の度合い)を測定し、硬度を求める方法。
  • デジタル機器により数値でデータが得られ、まずまず高い精度を有する。
  • 数万円台の初期費用で導入可能な、小型で簡単な操作の機器もあり、小規模な事業所などにも適する。
    本記事の③章で紹介)

この記事では、測定キットや試験紙で簡易的な測定が行える3製品をレビューします。

測定キットや試験紙で水の硬度を測ってみた!

水の硬度を簡易的に測定できる製品は、主に「試験紙タイプ」「パックタイプ」「滴定タイプ」の3タイプに分類できます。

今回は、3タイプから1製品ずつを用意して、実際に水の硬度を測定してレビューします。

レビューのために用意した3製品。
今回用意した、水の硬度測定用品3つ。

各タイプは使用方法が大きく異なり、それぞれにメリットやデメリットがあります。

水の硬度測定用品の分類と特徴
分類概要メリットデメリット
試験紙タイプ
試験紙タイプのイメージ画像
試験紙(細長い紙)を水に浸し、色の変化から、硬度の大まかな範囲を測定。とても手軽で簡単に測定可能。大まかな硬度の範囲しか判別できない。
観賞魚用を除くと、製品が少ない。
パックタイプ
パックタイプのイメージ画像
指示薬などが入った容器(パック)中に水を吸い込み、着色した水の色の濃さから、硬度の大まかな範囲を測定。割と手軽に測定可能。
比較的ポピュラーで、ネット通販などで入手しやすい。
大まかな硬度の範囲しか判別できない。
測定1回あたりのコストはやや高め。
滴定タイプ
滴定タイプのイメージ画像
付属のビーカー中で簡易的な滴定を行い、色が変化するまでの試薬の滴下数から、硬度を計算。5 mg/L刻みなど、簡易的測定にしては、細かく硬度の値を求められる。
実験としても面白く、自由研究にもとくにおすすめ。
試験紙やパックタイプよりも、少し手間がかかり、手軽さでは劣る。

試験紙タイプやパックタイプは、手軽ですが、分かるのは大まかな硬度だけです。滴定タイプは、手軽さでは劣るものの、比較的細かな値(5 mg/L刻みなど)が測定できます。

ここから、3つの製品を実際に使って、以下の5通りの水の硬度を測定します。

今回のレビューで硬度を測定した水(5種類)
  • 水道水 (40)
  • 精製水で2倍希釈した水道水 (20)
  • 精製水 (0)
  • evian (300)
  • 精製水で2倍希釈したevian (150)
()内の数値は、想定される大まかな硬度(CaCO3換算:mg/L)。ただし、水道水やミネラルウォーターの実際の硬度は、想定値からある程度外れている可能性もあります。
水道水、ミネラルウォーター(evian)、精製水をもとに用意した、5通りの水の硬度を測定してみます。
硬度を測定した5通りの水

⒈ 試験紙タイプ【Serim Research:水硬度試験紙】

試験紙タイプは、水を浸した紙の色の変化から水の大まかな硬度を測定できます。

観賞魚用を除くと試験紙タイプの製品は少なく、日本企業の製品もあまり見かけません。そこで今回紹介するのは、米国の試験紙専門メーカー“Serim Research”の水硬度試験紙です。

日本では、理化学機器などを扱う商社の大手である「アズワン (AS ONE)」が取り扱っています。

Serim Research 水硬度試験紙 50枚入 アズワン (AS ONE)
Serim Research 水硬度試験紙 50枚入 アズワン (AS ONE)
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先端に、指示薬を含ませた試験紙(約5 mm四方)が貼られています。白い部分は紙ではなく、耐水性のある素材です。
水硬度試験紙のボトルを空けると、50本の試験紙が入っている。
CaCO3換算で「0, 25, 50, 120, 250, 425 (ppm)」の6段階で硬度を判別可能(ppmはmg/Lと同義)。(※上側の数字は日本では使われない単位。)
水硬度試験紙のカラーチャートから、色に対応する硬度の範囲が分かります。
水硬度試験紙の説明書きです。保管方法や使用方法が書かれています。
水硬度試験紙の本体には、保管や使用方法に関する注意書きが英語で書かれています。

この試験紙はアメリカの製品なので、本体の説明書きは英語です。そこで、下のリストに保管方法や使用方法を日本語でまとめておきます。
原文の直訳ではなく意訳で、また、筆者による補足を含みます。

水硬度試験紙の保管方法
  • フタをしっかりと閉めて、15~30 ℃で保管する。
  • ボトルに入っている乾燥剤は取り除かず、一緒に入れておく。
水硬度試験紙の使用方法
  1. 試験紙の色がついた先端部分を、汲んでおいた水に浸すか、水道などの流水中に差し込む。
    一瞬でよい。長時間浸すと色素が溶け出して色が薄くなったり、本来とは異なる色を示したりする。
  2. 水から出したら、すぐに試験紙を軽く振って、余分な水を飛ばす。
  3. 15秒ほど待ってから、本体のカラーチャートと試験紙の色を比べ、水の硬度を確認する。

次に、水道水の硬度を実際に測ってみます。今回は、小さな瓶に水道水を入れ試験紙を浸しました。
小さな瓶に水道水を入れて、試験紙の先端をサッと浸した。

本体のカラーチャートと比較すると、50 mg/Lに近い色でした。用いたのは、おそらく硬度40 mg/L程度の水道水なので、妥当と言える測定結果です。
水道水に浸した試験紙は、カラーチャートの50ppmに近い色を示した。

さらに、別の水も含めた5通りの水の測定結果を、下の画像にまとめます。
試験紙による5通りの検水の測定結果を見る限り、妥当な結果が得られたように思われます。

水硬度試験紙の総合評価

今回の5つの測定結果を見る限り、試験紙は妥当な結果を示しているように思えます。そのうえ、簡便さや測定1回あたりのコストにも優れ、筆者の私感としては非常によくできた製品だと感じました。

また、0, 25, 50 (mg/L) という判別範囲は、軟水の中でもとくに軟らかいのか、もしくは軟水の中では硬めなのか、といった判定も可能です。軟水が多い日本においても、この点は大きなメリットとなります。

デメリットを挙げれば、緑(低硬度側)と赤茶色(高硬度側)系統の色の変化を読み取る必要がある点です。色覚異常の方にとって結果を判別しにくい可能性があります。とくに、教育現場で教材とする場合などでは、十分な考慮や配慮を要するでしょう。

⒉ パックタイプ【柴田科学:シンプルパックミニ 全硬度】

パックタイプの水質検査・測定用キットは、柴田科学からは「シンプルパック」、共立理化学研究所からは「パックテスト」が販売されています。様々な測定項目に応じた製品があり、簡単に水質測定が行えます。

パックタイプの製品(シンプルパックやパックテスト)について
  • 多くの製品がラインナップされており、多種多様な測定項目(例えば、pHや残留塩素濃度など)に対応した測定キット。硬度を測定するなら「全硬度」と書かれた製品が必要。
  • 一箱40~50回分程度の入り数であることが多く、その実売価格は4千円~5千円程度。
  • 一部の測定項目では、より少ない入り数で、お手頃な価格の製品もラインナップされている。(柴田科学なら6回分が入った「シンプルパックミニ」、共立理化学研究所なら10回分入りの製品。)
  • 全硬度の場合、柴田科学にはシンプルパックミニ(6回分入り)があり、比較的安価に購入できる。
    共立理化学研究所のパックテストにも、以前は全硬度の10回分入りがあったものの、既に生産終了。

今回は、柴田科学の「シンプルパックミニ 全硬度」を紹介します。

簡易水質検査キット シンプルパックミニ 全硬度 柴田科学 (Sibata Scientific Technology)
簡易水質検査キット シンプルパックミニ 全硬度 柴田科学 (Sibata Scientific Technology)
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説明書やカラーチャートの他に、パックが6回分入った測定キットです。パックはアルミ袋による個包装で、酸素や光が遮断されています。
開封したシンプルパックミニ全硬度の内容
パック内に入った粉末は、発色やpH調整のための試薬です。ノズル先端から水を吸い込んで使用します。
パックは個包装になっていて、パック内に指示薬などの粉末が入っている。
このカラーチャートとパックの色の濃さを比較し、「0, 10, 20, 50, 100, 200 mg/L(CaCO3換算) 」の6段階で、おおよその硬度を判別します。
シンプルパックミニ全硬度のカラーチャートは、0, 10, 20, 50, 100, 200 mg/Lの6段階を、色の濃さで見分ける仕様。

使用方法は簡単で、ノズルの先端からパックにある目安線まで水を吸い込み、振り混ぜてから色を比べるだけです。(公式の取扱説明書もウェブ上で公開されています。)

シンプルパック(遊離残留塩素)の測定手順の解説動画です。

総硬度ではなく遊離残留塩素のシンプルパックの動画ですが、基本的な使用方法は同じです。

水道水の測定では、下の写真のように、20 mg/Lより濃く50 mg/Lより薄い色になりました(写真では撮影のために器具で固定)。
水道水の測定では、カラーチャートの20mg/Lと50mg/Lの中間的な色を示した。

5通りの水の硬度を測定した結果を下の画像にまとめます。
シンプルパックで5通りの水を測定した結果、およそ妥当な結果だが、低硬度側では少し色の変化が分かりづらかった。

測定結果は、おおよそ妥当と思える発色を示しました。

しかし、低硬度の水については完璧とは言えない結果です。カラーチャートの低硬度側は0, 10, 20 (mg/L) と区別されていますが、硬度0の精製水の測定では、どちらかというと10 mg/Lに近い色に見えました。

シンプルパックミニ全硬度の総合評価

6回分の測定キットであるシンプルパックミニは、測定回数が少ない場合でも、比較的安価に購入できるのが大きなメリットです。例えば、水道水や井戸水の大まかな硬度を知りたい場合などには、第一選択肢となり得ます。

ただし、非常に低硬度の水を測定する場合では、色の濃さの違いがいくぶん判別しにくく感じました。これは製品が悪いのではなく、測定原理的に仕方のない部分ではあります。

なるべく正確な値を求めるケースでは、次に紹介する滴定タイプに軍配が上がるでしょう。

⒊ 滴定タイプ【共立理化学研究所:ドロップテスト 全硬度】

滴定タイプは、簡易的な滴定実験が行えるように、水を入れる容器や必要な試薬類がひとまとめになった測定キットです。代表的な製品としては、共立理化学研究所の「ドロップテスト」があります。

ドロップテスト 全硬度 WAD-TH 共立理化学研究所
ドロップテスト 全硬度 WAD-TH 共立理化学研究所
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カタログ値としては、硬度5~500 mg/L程度までの範囲を測定可能です。(500 mg/Lを少し越える程度なら、十分に測定できます。)

ちなみにドロップテストには、全硬度(型式:WAD-TH)の他に、カルシウム硬度(型式:WAD-Ca)もあるので、間違えて購入しないようご注意ください。

取扱説明書のほか、計量カップ(おそらくポリプロピレン製)と、必要な試薬類が4本入っています。
ドロップテストの内容物は、取扱説明書、小型ビーカー、4本の試薬類。
左から、計量カップ、pH緩衝液、指示薬、2通りの濃度の滴定液(1滴50 mg/L相当のものと、1滴5 mg/L相当のもの)。
試薬類は、pH緩衝液、指示薬、2通りの濃度の滴定液の4種類が入っている。

測定方法は、他のタイプに比べれば手順が多いものの、慣れれば簡単です。写真を多めに使って解説します。(公式の取扱説明書もウェブ上で公開されています。)

まずは水道水で測定してみます。使用した水道水の硬度は、およそ40 mg/Lです。

最初に、計量カップの10 mLの目盛りぴったりまで検水を入れます。そこに、pH緩衝液 (R-1) を3滴を加えます。この時点ではまだ水は無色透明です。
検水10mLに、pH緩衝液を3滴加える。この時点では、水はまだ無色透明。

次に、指示薬 (R-2) を2振り加えます。あまり多く入れすぎないように気をつけましょう。指示薬は小さな顆粒状なので、計量カップを軽く振り混ぜて溶かします。(ただし、硬度が高いときれいに溶けきらない場合がありました。その場合は気にせず次に進みます。)

指示薬を2振り分ほど加えます。溶けた部分が赤紫色を呈しており、カルシウムやマグネシウムイオンの存在を示しています。
小さな顆粒状の指示薬を、検水に2振り分加える。
計量カップを回すようにゆっくり振り混ぜて、この指示薬をしっかりと溶かしましょう。
指示薬を加えた直後の様子。徐々に水に溶けて、紫色に呈色している。
実験とは別に、指示薬の顆粒を薬包紙のうえに広げて撮影してみました(囲みの中はマクロ撮影写真)。
指示薬の写真。小さな顆粒状の試薬です。

この指示薬の水溶液は本来、青色です。ただし、カルシウムやマグネシウムイオンが存在すると指示薬と結びつき(錯体さくたいを形成)、赤紫色を呈します。普通の水道水では、指示薬を溶かすと写真のように赤紫色の溶液になります。
計量カップを混ぜて指示薬を溶かすと、赤紫色の溶液になる。

ここまでで滴定の準備が整いました。次いで、滴定液 (R-3) を水溶液が青く変化するまで、何滴加えたか数えつつ慎重に加えていきます。

当量点に近づいてきたら、1滴落とすごとに、計量カップを回すように揺すって全体が均一になるように混ぜましょう。
pH緩衝液と指示薬を加えたら準備完了。滴定液を使って滴定していく。1滴5 mg/L相当と、1滴50 mg/L相当の2種類があり、「ギリギリ」の必要最小量で青く変色させねばなりません。重要なのは、2種類の滴定液を上手く使い分けることです。

例えば硬度120 mg/L程度の水なら、50 mg/L相当を2滴と、5 mg/L相当を4滴ほどで青く変色させると、無駄なくスマートに滴定できます。

もし、硬水を1滴5 mg/L相当の滴定液だけで滴定しようとすると、たくさんの滴下数が必要です。すぐに滴定液がなくなってしまいますし、誤差も大きくなりやすく、測定に時間もかかります。

使い分けの例を、いくつか具体例を挙げて解説します。(あくまで理想的な例であり、目安です。厳密に従う必要はありません。)

軟水だと考えられる場合
1滴5 mg/L相当の滴定液だけで滴定する。
硬度がおよそ200mg/Lと考えられる場合
1滴50 mg/L相当を3滴加えた後、1滴5 mg/L相当を1滴ずつ加えて滴定する
まったく硬度の見当がつかない場合
  • まず、1滴50 mg/L相当だけで滴定し、大まかな硬度を求める。
    (例えば5滴なら、200 mg/Lより大きく、250 mg/L以下と分かる。)
  • もう一度最初から滴定を行い、最初に1滴50 mg/L相当を必要に応じて適宜加えてから、1滴5 mg/L相当で滴定していく。
    (上の例だと、まず1滴50 mg/L相当を4滴で計200 mg/L相当分加えた後、1滴5 mg/L相当を加えて滴定していく。)

今回の水道水は、軟水だと分かっているので、最初から1滴5 mg/L相当の滴定液を用います。何滴加えたかをしっかり数えつつ、色の変化に注意しながら1滴ずつ加えます。
計量カップ中の検水に、滴定液を1滴ずつ加えていく。当量点(滴定が完了した点)に達しない限り、溶液は赤紫色のままです。

今回の水道水の場合、8滴で青く変色しました。1滴5 mg/L相当なので、測定結果を計算すると硬度はおよそ40 mg/Lです。
1滴5mg/L相当の滴定液を8滴で、溶液が青く変化した。

注意点として、赤紫色でもなく青色でもなく、その中間の紫色や青紫色になる場合があります。下の写真は、2倍希釈した水道水の滴定中に撮ったものです。
紫色に変化した溶液。おそらく、ぴったり当量点に達している。これは、ギリギリで当量点に達して、指示薬の一部が青色に変化し、残りは赤紫色のままなので、中間の色になったと考えられます。つまり、ちょうど色が変化し始めた時点です。

このような場合、青色でなくとも、色の変化が生じた時点で当量点に達した(滴定が完了した)とみなしてよいでしょう。ちなみに、もう一滴滴下すると青色に変化します。

硬度成分を含まない精製水の場合、pH緩衝液と指示薬を加えただけで、最初から青色になります。

通常は指示薬が溶け出すと赤紫色になりますが、精製水だと最初から青色になります。
精製水に指示薬を加えても、赤紫色にはならず、溶けてすぐ青色になる。
計量カップを揺すって指示薬を溶かすと、鮮やかな青色の溶液になりました。
指示薬が溶けた精製水は、最初から綺麗な青色に呈色。

今回測定した5通りの水について、結果を表にまとめます。

滴定タイプ(ドロップテスト)による水の硬度の測定結果
測定した水
(事前の想定硬度:mg/L)
硬度の測定結果
(滴下数)
精製水0 mg/L
(0滴, 0滴)
2倍希釈の水道水
(20)
20 mg/L
(0滴, 4滴)
水道水
(40)
40 mg/L
(0滴, 8滴)
2倍希釈のevian
(150)
185 mg/L
(3滴, 7滴)
evian
(300)
355 mg/L
(5滴, 21滴)

事前の想定硬度は、滴定実験前に想定していた大まかな目安。
滴下数は、()内の左が1滴50 mg/L相当、右が1滴5 mg/L相当のもの。

ドロップテスト全硬度の総合評価

簡易的ではあれど滴定が行えるドロップテストは、手軽に入手できる製品のなかでは高い信頼性を有します。5mg/L刻みとはいえ、結果がはっきりと数値で求まる点は、他の2タイプにない極めて大きなメリットです。

また滴定では、他タイプのように微妙な色の変化を読み取るのではなく、当量点で急激に色が変わります。操作は少しだけ複雑ですが、測定をしていて一番「楽しい」のは、きっと滴定タイプのドロップテストでしょう。

デメリットは、少々価格が高いことや測定に少し手間がかかることですが、これを上回る大きなメリットがあると思います。自由研究などの用途にも、強くおすすめしたい製品です。

補足:測定後の廃液の捨て方(パック・滴定タイプ)

シンプルパックやドロップテストなどの測定キットは、使用後に廃水(色のついた水)が生じます。

この水を処分する際は、下水に流さず、ティッシュなどに含ませてから可燃ゴミとして廃棄してください。

滴定タイプの使わずに余った液体試薬の処分にも、同じ方法が適用できます。

水の硬度計・測定器・チェッカー(電子機器)も紹介

目視や手作業での計測ではなく、デジタル測定可能な電子機器タイプの水の硬度計もあります。

そうした製品の大部分は、②章で紹介したパックタイプにも使われている指示薬で、水を着色させてから測定機器にセットし、吸光光度法により測定する装置です。

指示薬を加えると、硬度が高い水ほど濃く呈色します。装置内で試料に光を当てて、その光が吸収される度合い(吸光度)を、装置内蔵の既知データ(検量線)と照らし合わせれば、対応する硬度を求められるのです。

吸光光度法は装置の小型化が可能で、検水の採取現場で迅速に測定できるメリットがあります。デメリットとしては、水中の共存イオンの影響を大きく受けるケースが稀にあるので、注意が必要です。

次に、その代表的製品を紹介します。

共立理化学研究所:デジタルパックテスト 全硬度

デジタル測定の硬度計としては、共立理化学研究所の「デジタルパックテスト 全硬度」が挙げられます。

デジタルパックテスト全硬度 共立理化学研究所
デジタルパックテスト全硬度 共立理化学研究所
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この機器での測定には、別売りの「パックテスト 全硬度」が必要です。

パックテスト 全硬度 WAK-TH 共立理化学研究所
パックテスト 全硬度 WAK-TH 共立理化学研究所
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パックテストは、②章で紹介した「パックタイプ」に属する製品で、単体でも使用(目視でカラーチャートと比較)できます。

デジタルパックテストで使う場合は、パックテストのパックに水を吸い込んで発色させた後、測定機器に付属の専用カップに注いで、機器にセットします。

パックテスト単体では、大まかな硬度しか判別できませんが、デジタルパックテストを使えば、1 mg/L単位での測定が可能です。

ただし、測定可能な範囲が20~100 mg/Lと、若干狭いことには注意を要します

デジタルパックテスト 全硬度の仕様(製品情報より抜粋)
測定原理PC吸光光度法
硬度測定範囲20 ~ 100 mg/L
表示分解能1 mg/L
測定時間2分
光源LED
検水温度原則として20 ~ 25 ℃
データメモリ50件
電源単4アルカリ乾電池 3本
本体重量約210 g(乾電池含む)

より詳しい情報や使用方法は、同社のウェブサイトより、デジタルパックテスト全硬度の製品情報ページをご覧ください。

まとめ・参考文献や資料

水の硬度は、市販の測定キットや試験紙を使えば、大まかな値を求められます。硬度の測定は、実験としても面白いものです。自由研究などで、水の硬度を調べてみたい場合には、ぜひ、お試しください。