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炭酸ナトリウムと過炭酸ナトリウムの違いは「漂白剤」かどうか

炭酸ナトリウムと過炭酸ナトリウムの違いは「漂白剤」かどうか

炭酸ナトリウムと過炭酸ナトリウムは、性質が似ている部分もありますが、決定的な違いがあります。

炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)は単なるアルカリ剤ですが、過炭酸ナトリウム(過炭酸ソーダ)は漂白剤です。

この2つの物質について、性質や配合されている製品の違いを紹介します。

炭酸ナトリウムと過炭酸ナトリウムの違い

炭酸ナトリウムと過炭酸ナトリウムには、以下のような違いがあります。

炭酸ナトリウムと過炭酸ナトリウムの違い
物質炭酸ナトリウム過炭酸ナトリウム
主な別名
  • 炭酸ソーダ
  • ソーダ灰
  • 炭酸塩
  • 洗濯ソーダ
  • 過炭酸ソーダ
  • 酸素系漂白剤
  • 炭酸ナトリウム過酸化水素化物
化学式Na2CO32Na2CO3・3H2O2
働きアルカリ剤漂白剤
水溶液
の液性
アルカリ性アルカリ性
(炭酸ナトリウムより少しだけ弱い)
漂白作用なしあり
代表的な
用途
  • 粉末洗剤にアルカリ剤として配合
  • こんにゃくや中華麺の製造に使用
  • 酸素系漂白剤として販売
  • 粉末洗剤に漂白剤として配合

過炭酸ナトリウムは酸素系の漂白剤であり、消毒薬や髪のブリーチ剤の成分でもある「過酸化水素」を含んでいます

一方、炭酸ナトリウムはただのアルカリ剤として用いられる物質で、漂白作用はありません。

この記事では、炭酸ナトリウム過炭酸ナトリウムを紹介していますが、炭酸水素ナトリウム(重曹)セスキ炭酸ナトリウムは別の物質です。

補足:重曹やセスキ炭酸ナトリウムも含めた比較表

重曹(炭酸水素ナトリウム)やセスキ炭酸ナトリウムを含めると、名称が似ていて混同しやすい4種類の物質があります。

これらの物質の、名称・化学式・性質などをまとめます。

過炭酸ナトリウム・炭酸ナトリウム・セスキ炭酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウム(重曹)の違い
代表的な名称過炭酸ナトリウム炭酸ナトリウムセスキ炭酸ナトリウム炭酸水素ナトリウム
主な別名
  • 過炭酸ソーダ
  • 酸素系漂白剤
  • 炭酸ナトリウム過酸化水素化物
  • 炭酸ソーダ
  • ソーダ灰
  • 炭酸塩
  • 洗濯ソーダ
  • セスキ炭酸ソーダ
  • テトラトリタ炭酸ナトリウム
  • トロナ
  • 重曹
  • 重炭酸ナトリウム
  • 重炭酸ソーダ
化学式2Na2CO3・3H2O2Na2CO3Na2CO3・NaHCO3・2H2ONaHCO3
水溶液の主な性質アルカリ性で、かつ漂白作用があるアルカリ性

水溶液のアルカリ性の強さは、炭酸ナトリウム > 過炭酸ナトリウム > セスキ炭酸ナトリウム > 炭酸水素ナトリウム(重曹)の順となる。

炭酸ナトリウムはアルカリ剤(漂白力なし)

炭酸ナトリウムは、 アルカリ剤として、洗濯用の粉末洗剤の働きを助ける助剤じょざい(ビルダー) に広く用いられています

また、炭酸ナトリウムは食品添加物公定書にも収載されており、こんにゃくの凝固剤や、中華麺のかんすいなどに利用されます。

過炭酸ナトリウムはアルカリ性の酸素系漂白剤

過炭酸ナトリウムは酸素系漂白剤の一種で、水に溶かすとアルカリ性を示します。

日本では、粉末の酸素系漂白剤として販売・配合されている成分は、ほぼすべて過炭酸ナトリウムです。

補足:主な酸素系漂白剤の成分

酸素系漂白剤の成分には、いくつかの種類があります。液体タイプの成分は過酸化水素で、粉末タイプの成分は日本では過炭酸ナトリウムと考えてよいです。

過酸化水素(H2O2
  • 常温で液体の物質。
    純粋・高濃度だと不安定で、水溶液(過酸化水素水)として扱う。
  • 液体の酸素系漂白剤に数%程度含まれている。
  • 粉末タイプの酸素系漂白剤より、漂白力は大きく劣る。
過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2
  • 代表的な粉末の酸素系漂白剤。
過ホウ酸ナトリウム(NaBO3・nH2O)
  • 粉末の酸素系漂白剤の一種。
  • 日本の家庭向け製品にはほとんど使用されない。

過炭酸ナトリウムは、漂白作用があることが何よりの特徴であり、炭酸ナトリウムとの大きな違いです。

水(お湯)に溶かして使うと、色素を分解して無色にしたり、汚れを分解して落としたりできます。

過炭酸ナトリウムは、アルカリ剤というより、ハイターなどの塩素系漂白剤に近い用途の物質だと考えると分かりやすいでしょう。

ただし、塩素系漂白剤よりは温和な漂白作用で、色柄ものの衣類にも使えます。

なお、水溶液のアルカリ性は、炭酸ナトリウムに比べると少しだけ弱いですが、重曹やセスキ炭酸ナトリウムに比べるとずっと強めです。

炭酸ナトリウム+過酸化水素でできている

過炭酸ナトリウムの化学式2Na2CO3・3H2O2は、炭酸ナトリウム(Na2CO3)と過酸化水素(H2O2)からなることを表しています。

この2つの物質が緩く結びついて固体を形成しており、水に溶けるとそれぞれの成分に解離します。

そして、炭酸ナトリウムがアルカリ性を、過酸化水素が漂白作用を示します。

炭酸ナトリウムや過炭酸ナトリウムが配合される製品

炭酸ナトリウムと過炭酸ナトリウムは、用途が異なる別の物質です。

しかし、粉末の洗剤や洗浄剤に、この2つの物質が一緒に配合されることも多いです。

以下のような製品によく配合されています。

炭酸ナトリウムや過炭酸ナトリウムが配合される粉末タイプの製品
製品の種類炭酸ナトリウム過炭酸ナトリウム
洗濯洗剤ほとんどの製品に配合配合した製品が主流
酸素系漂白剤配合した製品もある必ず配合されている
食洗機用洗剤ほとんどの製品に配合ほとんどの製品に配合
洗濯槽クリーナー配合されることが多い必ず配合されている
  • 粉末タイプの製品における状況で、液体タイプの製品では上記の限りではない。とくに、過炭酸ナトリウムは液体タイプには配合できない。
  • この表における洗濯槽クリーナーは、酸素系の粉末タイプを指す。

多くの製品で併用されるのは、次のようなメリットがあるためです。

  • 溶液の炭酸ナトリウム濃度が高まると、アルカリ性が強まり、汚れ落ちがよくなる。
  • 強いアルカリ性だと、過炭酸ナトリウムの漂白力が高まる。

配合される製品の例:粉末洗剤

炭酸ナトリウムや過炭酸ナトリウムが配合される製品の代表例として、洗濯洗剤に着目してみましょう。

洗濯洗剤における配合の例

粉末の洗濯洗剤は一般に、炭酸ナトリウムが配合されるため、高い洗浄力を発揮しやすい「弱アルカリ性」の液性になります。

さらに、少量の過炭酸ナトリウムも一緒に配合されることが多く、漂白作用により色素などの汚れ落ちを高めたり、雑菌を減らして臭いの発生を抑えたりしています。

液性がアルカリ性寄りでも漂白剤を配合できるのは、粉末洗剤ならではの長所です。

例として、「漂白剤入りでスッキリ消臭」をうたっている、花王の「ニュービーズ」の成分を見てみましょう

ニュービーズの成分。アルカリ剤(炭酸塩)が炭酸ナトリウムで、漂白剤が過炭酸ナトリウム
「アルカリ剤(炭酸塩)」と「漂白剤」の記載がある。

過炭酸ナトリウムが配合されているため、使用上の注意には「水に溶かして密閉容器に保管しない」との表記があります

なお、「漂白剤入り」と強調されていなくても、粉末の洗濯洗剤は過炭酸ナトリウムが含まれる製品が主流です。

ただし、酵素による洗浄効果を重視した製品など、一部の製品には炭酸ナトリウムのみが配合されています。漂白剤で失活してしまう酵素でも配合できるようになるためです。

例えば、同社の「アタック 高活性バイオパワー」の成分には、漂白剤の表記はなく、炭酸ナトリウムのみが配合されています

アタックの成分。炭酸ナトリウム(炭酸塩)は配合されているが、過炭酸ナトリウムは入っていない。
「アルカリ剤(炭酸塩)」はあるが「漂白剤」は記載なし。

過炭酸ナトリウムが配合されていないため、アタック 高活性バイオパワーには密閉に関する注意書きはありません。

まとめ・脚注・参考文献

炭酸ナトリウム過炭酸ナトリウムは、名前が似ていますが別の物質で、用途や化学的性質が異なります。

炭酸ナトリウムは、単なるアルカリ剤として用いられます。

一方、過炭酸ナトリウムは酸素系漂白剤です。水溶液はアルカリ性ですが、単なるアルカリ剤としてではなく、漂白のために用いられます

これら2つの物質はよく、粉末の洗濯洗剤などに一緒に配合されています。