クエン酸とビタミンCは、同じものだと勘違いされることがありますが、別の物質です。
この記事では、クエン酸とビタミンCがどんな物質か紹介し、両者の違いや共通点をまとめ、混同されがちな理由も考察します。
クエン酸とビタミンC(L-アスコルビン酸)の違い
クエン酸とビタミンCはまったく別の物質です。両者の違いを下表にまとめます。
- クエン酸とビタミンCの違い
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物質 クエン酸 ビタミンC
(L-アスコルビン酸)一言で表すと 柑橘類に多い酸味成分 野菜や果物に多いビタミンの一種 摂取する必要 なし
(体内で合成可能)摂取が必須
(栄養素のひとつ)酸味 強烈な酸味がある 酸味はあるがクエン酸より弱い 食品製造での主な用途 酸味料やpH調整剤 酸化防止剤 化学的安定性 安定性が高い 結晶は安定性が高い
水溶液だといくぶん不安定で分解されやすい
下図のように、クエン酸とビタミンCは分子の構造もまったく違います。
ビタミンC(L-アスコルビン酸)とは?
ビタミンCは栄養素のひとつで、野菜や果物に多く含まれています。ビタミンCは物質名をL-アスコルビン酸といい、有機酸の一種です。
ビタミンCは、栄養素としての働き以外に、還元性があることも特徴です。酸化防止剤として利用でき、体内では抗酸化作用を示します。
クエン酸とは?
クエン酸は、レモンなどの柑橘類に多く含まれる有機酸の一種で、強い酸味を持ちます。純粋なクエン酸は結晶性の固体です。
クエン酸はビタミンのような栄養素とは異なり、食品からの摂取が必須ではありません。ただし、クエン酸には1 gあたり3 kcal程度のカロリーがあり、炭水化物としてエネルギー源になります。
「クエン酸にビタミンCが入っている」という情報は間違い
「クエン酸にはビタミンCが入っている
」といった情報が、ネット上でしばしば見受けられます。これは間違った情報です。
クエン酸は、塩(塩化ナトリウム)やグラニュー糖(ショ糖)などと同じく純粋な物質であり、混合物ではありません。市販されているクエン酸にも、もちろんビタミンCは含まれていません。
「クエン酸にはビタミンCが入っている
」というのは、「食塩には砂糖が入っている
」というのと同じくらい、おかしな話です。
ビタミンCとクエン酸が同じだと間違われる原因はレモン?
同じ物質だと勘違いされがちなクエン酸とビタミンCには、以下のような共通点もあります。
こうした共通点のうち、レモンに多く含まれることは、2つの物質が混同される一因とも考えられます。
CMやキャッチコピーでは「レモン◯個分のビタミンC
」などと表現されることも多く、レモンはビタミンCが多いイメージが強い食品です。
一方、レモンは酸っぱい食べ物の代表格でもあります。
こうした情報やイメージが混ざってしまい、ビタミンCとクエン酸が同じものだと勘違いされることがあるのでしょう。
ただし、レモンの酸味の主成分はビタミンCではなく、クエン酸です。続けて詳しく解説します。
レモンの酸味成分はクエン酸
クエン酸とビタミンCは、どちらも酸味を持つ成分です。しかし、レモンの主な酸味成分はクエン酸です。その理由は2つあります。
- レモンの酸味がビタミンCではなくクエン酸に由来する理由
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- クエン酸はビタミンCよりずっと強い酸味を持つ。
- レモン果汁中には、ビタミンCの100倍以上のクエン酸が含まれる。
レモン果汁に含まれるクエン酸とビタミンCの量を比較します。レモン果汁100 gに含まれるビタミンCは50 mgほどです。一方、クエン酸は6.5 gほど含まれ、ビタミンCの100倍程以上の含有量です。
同じ量で比べてもクエン酸の方がかなり酸味が強いのに、含有量にも大差があるため、レモンの酸味にビタミンCはあまり寄与していないといえます。
ちなみに、レモン果汁100 gに含まれる水分は90.5 gであり、水分以外の成分が9.5 gです。
つまり、水分を除いたレモン果汁の成分中の、じつに7割近くをクエン酸が占めています。
まとめ・参考資料
クエン酸とビタミンCは、同じものだと間違われることもありますが、実際には別の物質です。市販のクエン酸にビタミンCが含まれるという情報も正しくありません。
クエン酸とビタミンCのどちらも、レモンに含まれる成分として知られますが、レモンの主な酸味成分はクエン酸です。ただしビタミンCにも、クエン酸よりは弱いものの酸味があります。