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ハイターとキッチンハイターの違いと代用の可否【科学的解説】

ハイターとキッチンハイターの違いと代用の可否【科学的解説】

ハイターキッチンハイターは、つけおきタイプ(希釈用)の塩素系漂白剤で、主成分とその濃度は同じ(次亜塩素酸ナトリウム6%)です。

しかし、そもそも用途が異なる製品で、以下のように成分や使い方などの違いがあります。

ハイターとキッチンハイターの違い
漂白剤ハイターキッチンハイター
用途衣料用台所用
界面活性剤配合されていない界面活性剤入り
主な使い方薄めて洗濯洗剤と一緒に使う単独で薄めて使う
価格やや安価ハイターよりやや高い

とくに重要な違いは、界面活性剤の配合の有無です。キッチンハイターは界面活性剤入りですが、衣料用のハイターに界面活性剤は含まれず、主に中性・アルカリ性の洗濯洗剤との併用が想定された製品です。

製品ラベルに書かれた使い方や注意点にも違いがあり、例えばハイターを普段の洗濯で使う際は、他の用途に比べて、より薄めて使う必要があります。

この記事では、共通点を整理したうえで、用途・成分・希釈倍率・使い方・価格や入手性などの違いを解説し、代用の可否(非推奨)にも触れます。

塩素系漂白剤は、酸性洗剤などと混ぜると有毒な塩素ガスが発生する恐れがあります(まぜるな危険)。必ず製品ラベルの使い方・注意点をよく読んでからお使いください。

安全な使い方については、日本家庭用洗浄剤工業会の「安全に使うためにもご参考ください。

ハイターとキッチンハイターの共通点―漂白成分は同じ

花王のハイターキッチンハイターは、希釈して用いる液体の塩素系漂白剤です。

ハイターとキッチンハイターのボトルを並べて撮影した写真
ハイターとキッチンハイター(どちらも600 mLの小サイズ)

いずれも主成分は「次亜じあ塩素酸えんそさんナトリウム」で、製造時の濃度は6%です

ハイターとキッチンハイターの原液を無色透明のガラス瓶に入れて撮影した写真。両方ともごく淡い黄緑色の溶液で、キッチンハイターの方は少し泡立っている。
ハイター(左)とキッチンハイター(右)の原液。両方ともごく淡い黄緑色の溶液で、界面活性剤が入ったキッチンハイターは少し泡立っている。

界面活性剤の配合の有無は異なりますが、それ以外の成分は共通しており、化学的には類似した製品といえます。

ハイターとキッチンハイターの成分一覧
製品成分
ハイター
  • 次亜塩素酸ナトリウム(製造時6%)
  • アルカリ剤(水酸化ナトリウム)
キッチンハイター
  • 次亜塩素酸ナトリウム(製造時6%)
  • アルカリ剤(水酸化ナトリウム)
  • 界面活性剤(アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム)

ハイターとキッチンハイターは花王製品ですが、他社からも、衣料用は「ブリーチ」、台所用は「キッチンブリーチ」などの製品名で、同タイプの塩素系漂白剤が販売されています。

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ハイターとブリーチの違い【ハイターは花王製品・他社はブリーチ】

界面活性剤の有無がハイターとキッチンハイターの最大の違い

ハイターとキッチンハイターの最も大きな違いは、界面活性剤の有無です。

ハイターとキッチンハイターの成分と使い方の違い
漂白剤ハイターキッチンハイター
界面活性剤配合されていない配合されている
単独での使用
他の洗剤との併用洗濯洗剤と併用が◎
  • 効果的
  • あまり効果的ではない
  • 推奨されない

キッチンハイターには界面活性剤が配合されていますが、衣料用のハイターには含まれていません。

ハイターとキッチンハイターの違いを比較するため、それぞれの製品を100倍希釈してスクリュー管瓶に入れ、振り混ぜた様子。キッチンハイターのみ泡立っており、界面活性剤の有無が分かる。
手前の瓶に、それぞれ約100倍に希釈したハイターとキッチンハイターを入れて、同時によく振り混ぜた後の様子。界面活性剤入りのキッチンハイターの溶液(右)のみ、泡立っている。

花王の公式サイトでも、キッチンハイターは洗浄成分(界面活性剤)が含まれていて、軽い汚れの洗浄もできることが紹介されています。

「ハイター」と「キッチンハイター」は、どちらも次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系の漂白剤ですが、台所で使う「キッチンハイター」には洗浄成分がプラスされていて、漂白と同時に軽い汚れまで落とせるのが特徴です。

ただし、界面活性剤の効果は、単に「汚れを落とす」ことだけではありません。

界面活性剤の存在により、漂白剤をより確実に作用させることができるのです。

ここからは、漂白における界面活性剤の効果と、ハイター・キッチンハイターの使い分けを紹介します。

界面活性剤は洗う物をぬれやすくして漂白を助ける

漂白剤は、界面活性剤が存在していると、洗う物に浸透しやすくなり、より確実に効果を発揮できます。

漂白を行う際によく問題となるのが、水の大きな表面張力です。

洗う物や汚れが水をはじきやすい場合、漂白液も表面ではじかれたり、繊維の奥まで浸透しなかったりします。そして、漂白効果の低下や漂白ムラなどを引き起こします。

そこで広く活用されているのが、界面活性剤のもつ、物体をぬらして内部にしみ込ませやすくする浸透しんとう湿潤しつじゅん作用です。

LIONによる浸透作用の実験動画。ただの水では浸透しにくい繊維にも、界面活性剤があると浸透しやすい。

次亜塩素酸に関する専門書『次亜塩素酸の科学―基礎と応用でも、第6章「次亜塩素酸ナトリウムと界面活性剤の併用効果」の冒頭に以下のような記載があります。

洗浄・殺菌操作における水酸化ナトリウム(NaOH)溶液および次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)溶液の短所は、溶液の表面張力が大きいために汚れや被洗浄体の細部に浸透する力に劣る点である。これは、媒体である水の短所に他ならない。次亜塩素酸ナトリウムがいかに有効な洗浄および殺菌作用を持っていても、処理対象物が媒体である水に濡れなければ効果は期待できない

(中略)

その有効な手段として、界面活性剤の湿潤作用を利用して濡れ性を向上させる方法、さらには(中略)がある。

水(漂白液)の表面張力を大きく低下させ、洗う物や汚れに浸透しやすくさせる界面活性剤の働きは、漂白においても重要といえます。

とくに、以下のいずれかに該当する場合は、界面活性剤なしでは漂白剤の効果が発揮されにくいです。

とくに界面活性剤が重要なケース

  • プラスチック製品の洗浄・漂白
    プラスチック製品や樹脂製品は、水となじみにくい疎水性そすいせいの表面であることが多い。
  • 繊維製品の洗浄・漂白
    衣類やふきんなどの繊維製品は、界面活性剤の働きで、漂白液が繊維の奥までしっかりと浸透しやすくなる。とくに、合成繊維は疎水性であるものが多く、界面活性剤が重要となる。
  • 疎水性の汚れ
    油汚れや、熱で変性したたんぱく質汚れなどが付着している場合、水をはじいてしまうので、界面活性剤の併用が望ましい。

さらに界面活性剤には、落ちた汚れが再び付着してしまうことを防ぐ再付着防止作用もあります

LIONによる再付着防止作用の実験動画。界面活性剤があると、汚れが全体に広まってしまうことを防げる。

塩素系漂白剤による漂白・洗浄では、強アルカリの作用で汚れが引き剥がされたり、分解された汚れや色素が漂白液に溶け出したりすることもあります。

界面活性剤を併用していると、そうした汚れの再付着を防いで、漂白のきれいな仕上がりを助けます。

「キッチンハイター」は界面活性剤入りで単独での希釈使用に特化

キッチンハイターは、他の洗剤と混ぜずに、単独で水で薄めて使います

キッチンハイターの使い方と注意点(花王の公式ページより)
  • 用途別の使い方
    • 除菌・消臭2分つけおき後、水ですすぐ。※木製のまな板は5分以上。
    • ウイルス除去食器用洗剤で一度洗い、約30秒つけおきした後、水ですすぐ。
    • 漂白約30分(汚れがひどい時には少し長めに)つけおきした後、水ですすぐ。
    • ドアノブ・取っ手・冷蔵庫の中など薄めた液を布などに染み込ませて拭いた後、必ず十分に水拭きする。
  • 用途別の使用量の目安(キャップ1杯は約25ml)
    • まな板、食器、ほ乳びん、お弁当箱など5Lの水にキャップ約2杯
    • ふきん、台ふきん、おしぼり5Lの水にキャップ約1.2杯
    • ドアノブ・取っ手・冷蔵庫の中など1Lの水にキャップ約0.4杯
  • 使用上の注意
    • 他の洗剤等と併用しない。
    • 原液で使わない。
    • 酸性タイプの製品や塩素系の排水口ヌメリ取り剤・生ごみ・食酢・アルコールと混ざらないようにする。有害なガスが発生して危険。
出典花王 キッチンハイター 小 600ml より要点を抜粋

花王の公式サイトでは、キッチンハイターやキッチン泡ハイターは、他の洗剤と混ぜずに単独で使用するとの注意喚起もなされています。

Q. 【使用方法】「キッチンハイター」や「キッチン泡ハイター」は、他の洗剤と混ぜていっしょに使ってもいいの?

「キッチンハイター」や「キッチン泡ハイター」は他の洗剤とは混ぜることはなく、単独で使用してください

思わぬ事故につながる場合がございますので、必ず、製品の裏面にある使用方法と注意表示をよく読んでからご使用ください。

食器用洗剤など他の洗剤を使う場合は、「キッチンハイター」、「キッチン泡ハイター」を十分水で洗い流してからお使いください。

キッチンハイターは界面活性剤が配合されているため、単独で水で薄めて使うだけで、手軽に効果的な漂白ができるのが大きなメリットです。

とくに台所用品には、水をはじく油汚れが付着しやすいですが、界面活性剤の働きで、しっかりと漂白液を浸透させることができます。

キッチンハイターは洗濯機での使用(ハイターの代用)はNG

キッチンハイターは、界面活性剤が配合されていることから、衣料用としての代用には注意を要します。

キッチンハイターは洗濯機で使わないこと

洗濯機でキッチンハイターを使うと、過剰な泡立ちによって水位を正しく検知できないなど、誤作動やエラーが発生する恐れがあります。

洗濯機での使用の問題点

市販の洗濯洗剤は、泡立ちを抑えるように設計されています。洗濯機も、そのような洗剤の使用を前提に作られています。

しかし、キッチンハイターに含まれるアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)は、泡立ち(起泡きほう性)に優れた界面活性剤です

衣料用ハイターの代わりにキッチンハイターを使うと、泡立ちすぎて、センサーによる水位検知の誤作動や排水エラー、すすぎ不足など、洗濯機にさまざまなトラブルが起こる恐れがあります。

洗濯機で塩素系漂白剤を使う場合は、花王のハイターや他社のブリーチなど、界面活性剤が配合されていない衣料用の製品を使いましょう

「ハイター」は洗濯洗剤(中性・アルカリ性)と併用すると効果的

衣料用の塩素系漂白剤である「ハイター」は、界面活性剤が配合されていません。

これは、衣類の漂白に界面活性剤が不要なわけではなく洗濯洗剤との併用を想定した設計であるためです。

実際に、ハイターの製品ラベルや公式サイトには、中性・アルカリ性の洗濯洗剤と一緒に使うことが記載されています

ハイターの使い方と注意点(花王の公式ページより)
  • 用途別の使い方
    • 黄ばみ・黒ずみの漂白、衣料の除菌・消臭、赤ちゃんの衣料の漂白
      洗たく機・手洗いで、洗たく用洗剤(中性・アルカリ性)と一緒に使う。(ステンレス槽の洗たく機でも洗たく可)
    • 食べ物、飲み物、血液、汗によるシミの漂白
      つけおきで、約30分(2時間以内)浸し、水ですすぐ。(生地を傷めたりすることがあるので2時間以上は浸さない。)
  • 用途別の使用量の目安(キャップ1杯は約25ml)
    • 黄ばみ・黒ずみの漂白、衣料の除菌・消臭、赤ちゃんの衣料の漂白
      タテ型洗たく機水30Lに70ml(キャップ約3杯)
      ドラム式洗たく機衣料4kgに70ml(キャップ約3杯)
      手洗い時水5Lに12ml(キャップ約1/2杯)
    • 食べ物、飲み物、血液、汗によるシミの漂白
      1Lの水に10ml(キャップ半分弱)
  • 使用上の注意
    • 原液で使わない。
    • 効果が落ちるので、酸素系や還元系漂白剤と併用、混合しない。
    • 白無地衣料専用(白無地衣料でも使えないものがありますので注意してください。)
    • 酸性タイプの製品と一緒に使う(まぜる)と有害な塩素ガスが出て危険。
出典花王 ハイター 小 より要点を抜粋

また、花王のQ&Aページでも、「洗濯洗剤とハイターを一緒に入れても問題ない」ことが説明されています。

Q. 【使用方法】洗剤と「ハイター」を一緒に入れて洗たくと漂白を同時にしてもいいの?

塩素系漂白剤が使える衣類なら洗剤と「ハイター」を一緒に入れても問題ありません

ただし、酵素こうそ入りの洗剤と一緒に使うと酵素の働きを低下させることがあります。また、酸素さんそ系漂白剤が入った洗剤と一緒に使うと、互いの漂白効果を弱めあってしまいます。

酵素入りの洗剤や酸素系漂白剤入りの洗剤を使う場合は、まず「ハイター」などの塩素系漂白剤で漂白した後に、一度すすいでからお洗たくすることをおすすめします。

補足 酵素や酸素系漂白剤を配合した洗濯洗剤との併用について

このQ&Aページにも記載されているとおり、ハイターを使うと、洗濯洗剤に含まれる酵素の働きを低下させやすく、酸素系漂白剤とはお互いの効果を打ち消し合います(いずれもハイターと混ぜても危険性はなく安全)。

とはいえ、洗濯洗剤中の酵素や酸素系漂白剤の配合量は少ないうえ、塩素系漂白剤の強力な漂白・洗浄作用が発揮されるので、あまり神経質になる必要はないでしょう。

なお、市販されている洗濯洗剤は、酵素入りの製品が主流で、粉末タイプであれば酸素系漂白剤入った製品が主流です。

例えば、以下のような弱アルカリ性や中性の洗濯洗剤なら、洗濯やつけおき漂白の際に、ハイターを一緒に混ぜて使うことができます。

粉末洗剤(ニュービーズ)、弱アルカリ性液体洗剤(トップ クリアリキッド)、中性液体洗剤(アクロン)を並べた写真
左から、ニュービーズ(粉末・弱アルカリ性)、トップ クリアリキッド(液体・弱アルカリ性)、アクロン(液体・中性)。いずれもハイターと併用可能な洗濯洗剤。

ハイターを使用する際は以下のように、まず洗濯洗剤を記載された使用量に従い水で薄め、次にハイターを加える手順がおすすめです。

ハイターと洗濯洗剤を使う手順

  1. 衣類が入った洗濯機や洗いおけに、水と洗濯洗剤(中性か弱アルカリ性のもの)を入れる。
  2. 使用量の目安に従ってハイターを加える。

なお、次に説明するように、ハイターは酸性の洗剤とは絶対に混ぜてはいけません

酸性の洗濯洗剤は併用禁止(まぜるな危険)

酸性の洗濯洗剤とハイターは「まぜるな危険」

酸性の洗濯洗剤と、ハイターなどの塩素系漂白剤は、絶対に併用してはいけません。混ぜると有毒な塩素ガスが発生します。

洗濯洗剤のほとんどは、液性が中性か弱アルカリ性です。しかし、製品数はごく限られるものの、酸性の洗濯洗剤も存在します。

現在、国内では酸性の洗濯洗剤として、P&Gの「アリエール除菌プラス」と花王の「アタック除菌アドバンス」の2製品が販売されています。

これら2つの洗剤は、ボトルに目立つように「まぜるな危険」「酸性タイプ」の表示があります。絶対にハイターなどの塩素系漂白剤と混ぜてはいけません。

酸性の洗濯洗剤であるアリエール除菌プラスとアタック除菌アドバンスを並べた写真。どちらのボトルにも「まぜるな危険」と「酸性タイプ」の警告表示がある。
左から、アリエール除菌プラスとアタック除菌アドバンス。どちらも塩素系漂白剤とは併用してはいけない酸性洗剤で、ボトルには「まぜるな危険」と「酸性タイプ」の表示がある。

ハイターとキッチンハイターの希釈倍率・注意書き・入手性の違い

ハイターとキッチンハイターは、用途と界面活性剤の有無のほかに、以下のような違いもあります。

  • 希釈倍率
    両製品とも希釈倍率は約100倍に設定されていることが多いが、ハイターは洗濯では約400倍に薄めて使うなど、製品と用途による違いがある。
  • 注意書き
    衣料用のハイターと台所用のキッチンハイターは、用途に合わせて注意書きの内容も異なる。
  • 価格と入手性
    価格はハイターの方が安い。店舗での取り扱いはキッチンハイターの方が多い。

これらの違いを順に解説します。

希釈倍率は用途により異なる(ハイターは洗濯では薄めに使う)

ハイターやキッチンハイターのラベルに記載された使用量の目安は、用途ごとに希釈倍率が異なります

ラベル記載の使用量の目安をもとに当サイトが計算した、ハイターとキッチンハイターの希釈倍率を表にまとめます。

ハイターとキッチンハイターの希釈倍率
漂白剤用途希釈倍率使用量
ハイタータテ型洗濯機430水30 Lに70 mL
手洗い418水5 Lに12 mL
つけおき101水1 Lに10 mL
キッチンハイターまな板・食器・ほ乳びんなど101水5 Lに50 mL
ふきん・台ふきん・おしぼり168水5 Lに30 mL
取っ手や冷蔵庫内の拭き掃除101水1 Lに10 mL
  • 希釈倍率は、希釈後の溶液の体積が、混ぜた水と漂白剤の体積の和になると近似して、ラベル記載の使用量の目安をもとに、当サイトが独自に計算した(小数点以下を四捨五入)。
  • ハイターの用途は、洗濯機や手洗いでは黄ばみ・黒ずみの漂白、衣料の除菌・消臭、赤ちゃんの衣料の漂白、つけおきでは食べ物、飲み物、血液、汗によるシミの漂白となっている。
  • ハイターのドラム式洗濯機での使用量の目安は「衣料4 kgに70 mL」となっている(表中では省略)。

希釈倍率は、ハイターの洗濯での使用は418~430倍、それ以外は101~168倍と、大きな開きがあります。

衣料用のハイターは、しつこいシミを落とす「つけおき」を除き、衣類の傷みを防ぐために、他の用途よりも薄めて使います

一方、キッチンハイターは、使用量の目安よりもずっと薄くすると、界面活性剤も薄まりすぎて本来の性能を発揮できない場合があります。界面活性剤には、濃度が一定以上の場合のみ、大きな界面活性作用が生じる性質があるためです

ただし、ふきんやおしぼりでは、繊維の傷みを考慮した設定と思われる、やや薄め(約168倍)での使用量が記載されています。

どちらの製品も、用途に応じた使用量の目安を守ることで、安全かつ効果的な漂白が行えます。

製品ラベルの使い方や注意点の内容も異なる

衣料用のハイターと台所用のキッチンハイターでは、製品ラベルに記載された使い方や注意点も、用途に合わせて大きく異なります

各製品に特徴的な使い方や注意書きとしては、例えば以下のような内容が記載されています。

ハイターの注意点の例

  • 洗濯洗剤(中性・アルカリ性)と一緒に使うことを推奨。
  • 白無地衣料専用。色柄物や毛・絹などの素材には使えない。
  • 2時間以上のつけおき不可(生地を傷める)。

キッチンハイターの注意点の例

  • 他の洗剤と混ぜない(単独で薄めて使う)。
  • 塩素系の排水口ヌメリ取り剤・生ごみ・食酢・アルコールとも混ざらないようにする。
  • キッチン泡ハイター容器への詰め替えはNG。
  • シンクに直接漂白液をためてつけおきするのは非推奨。

ここでは代表的な注意点を紹介しましたが、使用時は、製品ラベルや公式ページに記載された使い方や注意書きをご確認ください。

価格や入手性にも差がある

ハイターとキッチンハイターでは、価格はハイターの方が安く店舗での取り扱いはキッチンハイターの方がやや多い傾向にあります。

ここからは、家庭向けにラインナップされている小(600 mL)・大(1500 mL)・特大(2500 mL)の3サイズについて、価格と店舗での取り扱いの多さを比較します。

価格はハイターの方がやや安価

ハイターは、キッチンハイターよりも少し安価です。

花王の公式通販サイトでは明確な価格差があり、現在、キッチンハイターはハイターの1.3~1.4倍ほどの価格で販売されていました。

花王の公式通販サイトでの価格一覧
サイズハイターキッチン
ハイター
小・600 mL181242
大・1500 mL352473
特大・2500 mL506731
  • 時点の、花王公式通販サイト(My Kao Mall)での税込み販売価格(円)を記載。
  • 価格の欄は、調査対象となった販売ページへリンクしている。

ホームセンターやドラッグストアなどの小売店では、価格差はやや縮まる傾向にありますが、それでもハイターの方が安く売られています。

公式通販サイトなどで商品の価格を閲覧できる10社の小売チェーンを対象にした、当サイト独自の価格調査でも、ハイターとキッチンハイターには価格差が見られました。

小売チェーンにおけるハイターとキッチンハイターの価格調査結果
容量600 mL1500 mL2500 mL
製品の種類ハイターキッチン
ハイター
ハイターキッチン
ハイター
ハイターキッチン
ハイター
カインズ178178348348478580
コーナン184173360415525635
DCM2173824701010503
コメリ188348345498570
ナフコ198171348398498628
ウエルシア174397657
ツルハドラッグ178240320499778
マツモトキヨシ176187469569710
MrMax163163328383
ヨドバシ173199350405502669
平均値178.6189.0348.0412.9582.9636.7
中央値178.0182.5348.0401.5502.0635.0
取扱チェーン数71081079
  • 時点の、小数点以下を四捨五入した税込み販売価格(円)を記載。ポイント還元は考慮していない。
  • ハイターには水色、キッチンハイターにはピンクの背景色を適用。
  • 記載した価格は、参照した小売チェーンのページへリンクしている。
  • セールなどで普段より割引された価格は赤字で「*」を記した。
  • 取り扱いがなかった場合は「–」を記載。

ハイターとキッチンハイターの成分の違いは、界面活性剤の有無です。

キッチンハイターは界面活性剤が配合されている分、原料や製造工程上のコストも増えるため、価格に反映されていると考えられます。

店舗での取り扱いはキッチンハイターの方が多い

店舗での取り扱いは、衣料用のハイターよりも、台所用のキッチンハイターの方が多い傾向にあります。

先述した当サイトによる独自価格調査でも、小売チェーン10社のうち、取り扱いがあった小売チェーン数は以下のようになっていました。

小売チェーン10社におけるハイターとキッチンハイターの取り扱い状況
容量600 mL1500 mL2500 mL
製品の種類ハイターキッチン
ハイター
ハイターキッチン
ハイター
ハイターキッチン
ハイター
取扱チェーン数71081079
  • 本記事で掲載済みの当サイト独自の価格調査(時点)における、取り扱いがあった小売チェーンの数を抜粋。
  • ハイターには水色、キッチンハイターにはピンクの背景色を適用。

キッチンハイターは、特大(2500 mL)の取り扱いがなかったMrMax(ミスターマックス)を除き、調査対象の小売チェーンでは3サイズとも販売されていました。

ハイターは、キッチンハイターよりも取り扱い状況はやや劣り、ウエルシアのように3サイズとも取り扱いがない小売チェーンもありました。

ハイターとキッチンハイターは代用可能?【化学的には可能でも非推奨】

ハイターとキッチンハイターを、異なる用途に代用することは推奨できません

ハイターとキッチンハイターは、用途の異なる製品(衣料用と台所用)ですが、界面活性剤以外の成分は共通しています。そのため、化学的な観点からは、漂白・除菌作用はおおよそ同等であり、代用できるケースもあります。

しかし、塩素系漂白剤は、使い方を誤ると有毒な塩素ガスが発生することもあるなど、取り扱いに注意を要する製品です。製品ラベルには、用途に応じた内容の注意事項が記載されています。

安全に使うためには、用途に合った塩素系漂白剤を選び、製品ラベルなどに記載された使い方や注意書きをよく読んでから取り扱いましょう。

非推奨だがどうしても代用する場合

もし、どうしても代用せざるを得ない場合は、使用目的に近い製品の使い方や注意書きを必ず確認してください。

例えば、台所用品の漂白に衣料用ハイターを流用する場合は、キッチンハイターの使用方法や注意点を事前に確認しておくことでリスクを下げられます。

製品ラベルの内容は、ハイターキッチンハイターの公式ページでも確認できます。

また、成分の違い(界面活性剤の有無)によって、代用できないケースもあります。

例えば、先述のとおり、界面活性剤入りのキッチンハイターは、過剰な泡立ちが誤作動などを引き起こす可能性があるため、洗濯機での使用には適しません。

まとめ・脚注・参考文献

ハイターキッチンハイターは、漂白成分やその濃度は同じでも、用途と界面活性剤の有無に違いがあります。

キッチンハイターは界面活性剤入りで、単独で希釈して、台所用品の除菌・漂白に使用します。ハイターは衣料用で、洗濯洗剤との併用で効果が最大限に発揮される設計です。

用途に合った塩素系漂白剤を選び、ラベルの使い方や注意事項をよく確認して使用しましょう。

さまざまな塩素系漂白剤やカビ取り剤の違いについては、別の記事で解説しています。

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