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基本的な味覚の種類「五味」を知ろう

2018年8月27日

味覚の種類「五味」を知ろう

生きていく上で欠かせない「食」。豊かな現代に生きる私たちは、栄養だけでなく、食べ物においしさを求めます。

食べ物のおいしさを決める要素は、食感や温度など様々。中でも一番重要なのは「味覚」です。

 

普段何気なく感じている味覚ですが、「五味」と呼ばれる5つの味に分類できます。

基本的な味覚である五味と、そもそも味とは何なのか、人間は何のために味を感じるのか知っておきましょう。

五味とは基本となる5種類の味覚のこと

ヒトの味覚は生理学的に、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5種類に分けられます。

この、味覚を構成する五つの味を五味(ごみ)、または基本味(きほんあじ/きほんみ)と言います。

 

味覚の種類(五味)

どれもなじみ深い味ですよね。

次に、味とは何なのか。その正体を探っていきましょう。

 

味とは物質を感じる感覚の一つ

五感の一つである味覚。

味覚とは何かというと、食べ物などに含まれる「物質」を味として認識する感覚のこと。

堅苦しく聞こえるかもしれませんが、塩味であれば塩分(塩化ナトリウム)を感じている、という具合ですね。

 

味覚の仕組み

ヒトは食べ物を口にして味を感じます。当然ですが、体の他の部分では味を感じることはできませんね。

では、体の中で舌だけが味を感じるのはなぜでしょうか。

 

その秘密は、舌の表面にある「味蕾(みらい)」という器官にあります。

蕾(つぼみ)のような形をした器官なので、味蕾という名前が付いています。

味蕾は50~150個程の細胞からできた、見えないほど小さな器官で、口の中に4000~5000個ほど存在します。

 

この味蕾が、味を生じさせる物質を受容(感じとる)することで、私たちは味を感じるのです。

(正確には、味蕾の中にある味細胞(みさいぼう)にある受容体が物質を受容します。)

 

ちなみに、味蕾は舌の表面だけでなく、軟口蓋、喉頭蓋、咽頭などにもいくらか存在します。

私たちは舌だけでなく、口全体で味を感じているんですね。

 

五味で感じている物質

味覚の仕組みが分かったところで、五味について化学の観点から見てみましょう。

五味で感じている物質は、それぞれ次の通りです。

 

甘味

私たちが甘味を感じている物質は、糖類です。

糖類では、砂糖(ショ糖)、ブドウ糖、果糖などが代表的です。これらは強い甘味をもたらします。

特に、果糖はとても強い甘味を持ち、砂糖の1.73倍という甘さです。

 

一方で、デンプンのように糖類が数珠つなぎにいくつも繋がったものは、ほとんど甘味を感じなくなります。

 

また、糖類以外にも甘味を感じさせる物質はあります。

例えば甘味料。少量でも強い甘味があり、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウムなどがよく使われています。

さらに、一部のタンパク質やクロロホルムなどの有機物、酢酸鉛のような無機物にも甘味があるものが存在します。

 

酸味

酸味はその名の通り、酸性の物質に対して感じる味です。

強い酸性を示す酸ほど、より酸っぱく感じる傾向があります。

 

酸っぱい食べ物の代表と言えばレモンですが、クエン酸という有機酸が含まれているために酸っぱく感じます。
(酸っぱいのはビタミンCのせいだと思われがちですが、ビタミンCはわずかな酸味しかありません。物質の名前としてはアスコルビン「酸」と言うのですが、とても弱い酸性なのであまり酸っぱくないのです。)

また、「酸っぱい」という言葉の語源でもある酢には、酢酸が含まれています。これは酢酸菌という微生物の働きによって産生されます。

 

塩味

塩味はもちろん塩の味です。塩化ナトリウムに対して感じる味ですね。鹹味(かんみ)とも言います。

塩味を持つのは食塩(塩化ナトリウム)だけではなく、塩化カリウムや塩化マグネシウムなども塩味を示します。ただし、これらは食塩の味と同じではなく、苦味を含んでいます。

 

塩(しお)、つまり食塩の味を示す際には「しおあじ」と読み、塩化カリウムなど他の種類の塩(えん)も含めた様々な無機塩の味を示すには「えんみ」と読んで区別することがあります。

 

苦味

苦味はどんな物質に対する味なのかイメージがしにくいですね。

それもそのはず。苦味を感じる物質は実に様々で、化学的に明確な共通点がありません。主な苦い物質を一覧にまとめてみましょう。

  • アルカロイド類=植物に含まれ、窒素原子を持つアルカリ性の化合物の総称。苦味を持つ有機化合物として代表的存在。
    カフェイン(コーヒーやお茶)、テオブロミン(カカオ)、ニコチン(タバコ)など。
  • テルペノイド類の一部 テルペノイドは生物が広く生産する有機化合物。
    フムロン(ビール原料のホップ)、リモニン(オレンジ、レモン)、モモルディシン、チャランチン、ククルビタシン(三つともゴーヤに含まれる)
  • 配糖体の一部 糖と他の化合物が繋がった(縮合)構造を持つ。テルペン配糖体に多くの苦味物質が知られている。
    ナリンギン(グレープフルーツ、はっさく)
  • 苦味を持つ一部のアミノ酸やペプチド
  • カルシウムやマグネシウムの無機塩類
    塩化マグネシウム(にがり)、塩化カリウム

この通り、いろいろな物質が苦味を持ちます。また、コーヒーの苦味やゴーヤの苦味なども、単一の成分ではなくたくさんの苦味成分が組み合わさった味です。

 

うま味

日本人にはなじみ深い味ですね。実際、うま味成分であるグルタミン酸ナトリウムを発見したのは日本人です。英語圏でもumamiとして知られている味です。

日本の「出汁(だし)」はうま味成分を抽出したものですね。

ここで、うま味成分となる物質もまとめてみましょう。次の三種類です。

  • グルタミン酸(昆布)
    アミノ酸の一種で、昆布だしのうま味成分。チーズやお茶、白菜、ねぎ、トマトなどにも含まれる。
  • イノシン酸(かつお節)
    かつおだしのうま味成分。核酸である。日本ではかつお節の他に煮干しなどの食品でなじみ深いが、肉類にも多く含まれている。
  • グアニル酸(干し椎茸)
    イノシン酸と同じく、核酸。キノコ類のうま味成分。

この三つが主なうま味成分ですが、他に貝類に含まれるコハク酸などもあります。

これらうま味成分は、単独でなく複数組み合わさると、相乗効果でよりうま味が増します。

 

味を感じる理由

次に、人間が何のために味を感じるのか考えてみましょう。

なんだか哲学的に感じられるかもしれませんが、しっかりと科学的な説明ができます。

味を感じることが必要な生物学的理由は二つ。「必要な栄養を摂取するため」と、「危険なものを食べてしまわないように避けるため」です。

味覚を感じる理由。栄養と危険を判断。

 

栄養摂取のため

命を維持するためには栄養の摂取が欠かせません。

ヒトは、必要な栄養素を摂取するために、「おいしい」と感じるようにできています。

五味のうち、甘味・塩味・うま味の3種類が該当します。

甘味はエネルギー源である糖類を、塩味は必要なミネラルを、うま味は体を作るタンパク質やアミノ酸(タンパク質の構成成分)を求めて摂取するために備わった味覚です。

必要な栄養素をしっかりと摂れるように、これらの味を「おいしい」と感じるように進化してきたのですね。

(なお、イノシン酸やグアニル酸は核酸であり、タンパク質とは直接関係ありません。しかし、これらを含む食品はタンパク質も豊富である場合が多いので、核酸をおいしいと感じるようになったのでしょう。)

 

危険を避けるため

文明が発達するはるか前、人類は狩猟採集生活をして暮らしていました。

自然界では、多くの生き物が毒を持っています。特に、植物は毒物の宝庫です。

現代のようにスーパーマーケットで買い物をする生活とは違い、食べられるものとそうでないものを見分けることは命がけでした。

また、冷蔵庫のない生活では食べ物の保存も大変です。とっておいたものが腐っていないか、慎重に見分けて食べる必要があります。

 

このように、食べることは「見分ける」ことでした。

そこで、見た目や匂いで分からない危険なものを避けるために、味覚を使いました。酸味と苦味です。

苦味は、毒を持つ植物などを避けるのに役立ちます。酸味は食べ物が腐っているサインです。

 

現代でこそ、程よい苦味と酸味はおいしさにもなりますが、元々は避けるべき食べ物を見分けるシグナルだったのです。

 

五味以外の味

味覚は甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の五味に分けられますが、この中には辛味や渋味などは含まれません。

これは、生理学上の「味覚」の定義にあります。

味蕾を通して感じている味のみが、味覚と定義されているのです。

辛さや渋味などは、痛みの感覚である痛覚や、温度を感じる温度覚を通して認識されます。

味蕾以外の場所にある受容体を通して認識されるので、生理学的には味覚に分類されないんですね。

ただし、「生理学的には」味覚に分類されないだけで、私たちが食べ物のおいしさを感じるためには重要な味です。

 

辛味

唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは、温度を感じる器官を刺激することで、痛みに近い感覚として認識されます。

辛味は痛み(痛覚)でもあり、熱さでもあると言えますね。辛いことを「ホット」と表現しますが、私たちは実際に熱さに近いものを感じているんです。

一方で、ワサビやマスタードの辛味成分、アリルイソチオシアネートは、低温を感じる受容体を通して認識されます。

 

渋み

渋みの成分としては、タンニンが代表的です。お茶や渋柿、ワインなどに多く含まれています。

タンニンは、舌や口の粘膜のタンパク質と結合する性質があります。

これによりタンパク質が変性(タンパク質の構造が変わること)することで、渋味が生じると考えられています。

この渋味も、味蕾を通して感じられる味ではなく、痛みに近い感覚です。

 

第6の味覚になるかも?研究中の味

味覚の種類は、五味と呼ばれる5つでしたね。

しかし、先ほど述べた味覚の定義からすると、味蕾の受容体を通して感じられる味が発見されたら第6の味覚として認められるかもしれません。

そして実際に、いくつかの新しい味覚候補となる味について、多くの研究機関で調査されています。

 

脂味

栄養素の中で、最も高いカロリーを持つ脂肪。これを感じる味覚があっても不思議ではありませんよね。

 

アメリカにあるパデュー大学の研究者らは、「脂味」の存在を実験により確認したと発表しています。

この実験では、100人ほどの被験者に対して、他の五味と脂肪酸の味を区別できるか、味をつけた複数の溶液を準備して知覚テストが行われました。

結果として、多くの被験者が他の味と脂肪酸の味を区別することができたそうです。

 

デンプン味

甘味は、砂糖などの分子量の小さな糖類に対する味覚でした。一方で、デンプンのように大きな分子量を持つ炭水化物には、ほとんど甘味がありません。

(ご飯やパンの甘味は主に、デンプンが唾液中の消化酵素により分解されて生じる糖類によるものです。)

 

アメリカ、オレゴン州立大学の研究者らは、「デンプン味」なるものを発見したと報告しています。

彼らは、「甘味とは別に」デンプン味が存在するかどうかを実験で確かめる必要がありました。

そこで被験者たちに、一時的に甘味の感覚をなくす特別な物質を摂取させた上で、炭水化物の量が異なるいくつかの食品を食べさせ、味の感じ方を調べました。

すると被験者らは、甘味をなくす物質を摂らない時と同様に、炭水化物の量の違いを、味の違いとして感じ取ることができたのです。

一方で、炭水化物の長い鎖を、短い鎖へと分解する酵素を失活させる溶液を与えた場合、被験者は味を感じ取ることができませんでした。

このことから、デンプン味は短い鎖の炭水化物を感じ取っているのだろうと、この研究では結論づけられています。

 

カルシウム味

カルシウムは動物にとって不可欠ですが、摂りすぎても健康を害してしまいます。

重要な栄養素であるがゆえに、以前から一部の研究者たちの間で、カルシウムに反応する味覚があると考えられていました

現段階では、ハエやラット・マウスなどの動物実験によって、カルシウム味の存在が確かめられています。

 

近いうちに、ヒトの感じるカルシウム味に関する研究結果が発表されるかもしれませんね。

 

コク味

「コク」という言葉は料理の味を表す時によく使われます。ですが、コクが具体的にどんな味かと言われれば表現しにくいですよね。

一般的にコクとは、広がりのある複雑な味を示すものだと考えられています。

 

実は、コクについても科学に基づいた研究がなされており、グルタチオンというトリペプチド(三つのアミノ酸が繋がったもの)にコクがあるとされています。

グルタチオンが味細胞に受容されると、うま味や甘味、塩味に広がりをもたらすことが示唆されています。

 

第6の味覚が認められるまで

脂肪味、デンプン味、カルシウム味、コク味。いろいろな新しい味が発見されていますが、すぐに基本味である五味に付け加えられるわけではありません。

基本味として認められるには、ヒトの味蕾にある味細胞に、その味物質の受容体があることを突き止めねばなりません。

また、研究の場を越えて広く一般に浸透するには、その味の存在が人々にとっても理解しやすく、役立つ考え方でないといけません。

新たな味覚の存在が認められるとしても、それはずっと先のことかもしれませんね。

 

とはいえ、うま味が世界的に認められたのは2000年頃からです。(2000年に行われた研究で、うま味成分のグルタミン酸に対する受容体が、味蕾の味細胞から発見されました。)

それまで味覚の種類は4種類だというのが定説だったのです。

同じように、いつか新しい種類の味覚が認められ、「六味」や「七味」に増える日が来るかもしれません。

人類の食文化を豊かにするためにも、研究が進むことに期待しましょう。

 

味覚の種類まとめ

まとめ

味覚の世界は、実に複雑で奥が深いです。

さらには、食べ物を食べて味わう際はより複雑なことが起こります。視覚や香り、気持ちや雰囲気さえも風味・おいしさに影響します。

 

食べ物の味を科学的に説明するのは難しいことです。ですが、味を構成する基本的な要素を知ることで、料理の上達につなげることもできます。

次に料理をする時(食べる時?)は、ぜひどんな種類の味覚があるのか思い出してみてください。

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