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クエン酸の食用と工業用・掃除用の違いは「純度」ではない

クエン酸の規格を解説

市販されているクエン酸は主に、食品添加物の製品と、工業用や掃除用などの製品に大別できます。(目にする機会は少ないものの、日本薬局方の医薬品のクエン酸もあります。)

食品添加物のクエン酸は、食用はもちろん、掃除や洗浄にも流用できます。一方、工業用や掃除用のクエン酸は、食用には使えません。

では、これらのクエン酸に、具体的にどんな違いがあるのかというと、ネット上には情報が少ないうえ、誤解を招くような情報も出回ったりしています。そこで本記事では、両者の違いを詳しく解説します。

クエン酸の規格による分類(医薬品・食品添加物・その他)

化学的分類としては、クエン酸には「クエン酸無水物」と「クエン酸一水和物」の2種類が存在します

化学的な分類とは別に、製品の規格としては、「食品添加物」、「医薬品」、どちらにも該当しない製品(工業用や掃除用など)の3つに分類できます。(いずれのグループでも、無水物と一水和物の、両方の製品があります。)

  • 主な公的規格としては、「食品添加物」と「医薬品」のクエン酸がある。
  • その他のクエン酸は一般に、「工業用」や「掃除用」と呼ばれている。

医薬品のクエン酸を、一般の人が目にする機会は少ないでしょう。医薬品のクエン酸は主に、調剤に用いられるためです。

医薬品を除く一般向け製品では、食品添加物規格のクエン酸と、工業用や掃除用のクエン酸の、大きく2種類に分けられます。

工業用や掃除用のクエン酸は、食用には使えません。食品添加物のクエン酸なら、食用はもちろん、掃除などの用途にも流用できます。

クエン酸の規格による純度の違いは?食用と掃除用の違いは?

工業用や掃除用のクエン酸は、食用に使ってはいけません。口にした場合の安全性が一切保証されていないためです。しかし、工業用や掃除用のクエン酸が、食品添加物の製品に比べ、純度の劣る粗悪品とは限りません。

この章では、ネット上には怪しい情報も多い「クエン酸の純度や不純物」について、化学の知識を持つ筆者が、情報や見解を提示します。

クエン酸の規格と純度の関係

クエン酸は、純度が高い方から順に「医薬品」「食品添加物」「工業用」の3つに分類されるという情報が、ネット上に多く存在します。おそらく、誰かの思い込みで書かれたものが広まった、誤った情報です。

まず、医薬品と食品添加物の規格は、互いに独立しています。例えば、「医薬品に満たない品質のものが食品添加物に分類される」といった仕組みではありません。

日本薬局方、もしくは食品添加物公定書で定められた多数の基準を満たした製品だけが、それぞれ、医薬品や食品添加物として販売されています。

クエン酸の場合、どちらの規格でも、認められる純度の下限は99.5%です。つまり、医薬品と食品添加物のクエン酸で、規格上要求される純度に差はありません。

医薬品や食品添加物以外の、工業用や掃除用などのクエン酸では、純度はまちまちです。医薬品や食品添加物と異なり、公定の規格品でない製品も多いためです。

クエン酸の規格と純度
規格 医薬品 食用
(食品添加物)
その他
(工業用や掃除用)
純度 99.5%以上 99.5%以上 製品により異なる

精製純度の違いにより、医薬品、食用(食品添加物)、掃除用や工業用のクエン酸に分けられている」という情報はデタラメ。

工業用や試薬(研究や試験用の薬品)のクエン酸でも、医薬品や食品添加物と同等かそれ以上の純度の製品もあります。また、クエン酸にはJIS規格(日本産業規格)も存在し、JISマークのついた試薬用のクエン酸などもあります。

しかし、掃除用に売られている家庭向けのクエン酸では、公定の規格に従った製品ではない場合も多いでしょう。純度が大きく劣るケースもあり得ます。とはいえ、工業用や掃除用だから純度が低いと決め付けるのは誤りで、製品によります。

医薬品や食品添加物のクエン酸
  • どちらの規格でも純度は99.5%以上。
  • 日本薬局方、または食品添加物公定書で定められた多数の基準を満たしている。
工業用や掃除用のクエン酸
  • 純度はまちまち(純度が低いとは限らない)。
  • 安全性が不確かなので、食用には適さない(有害物質が含まれるとは限らない)。

クエン酸の不純物の正体は?工業用・掃除用を飲んでしまったら危険?

クエン酸の規格と不純物について、ネット上には、誤解を生むような主張もよく見受けられます。例えば、「食品添加物でない工業用のクエン酸は、純度が低くて不純物が多く、有害であり食用には危険だ」といったものです。

確かに、工業用クエン酸は飲食物には適さず、食用には食品添加物規格のクエン酸を使うべきです。ただ、工業用クエン酸の純度が、必ずしも低いとは限りません。

何よりの問題は、「純度が低いものには有害物質が多く含まれる」と決め付けていることです。非論理的な主張であり、誤解や必要以上の不安を招きます。

純度が低いからといって、有害な物質が多く含まれるとは限りません。逆に高純度であっても、例えば少量の有害な重金属などを含む場合、食用にすると中毒に至る可能性もあります。

  • 安全性や有害性は、純度だけでは判断できない。
  • クエン酸に含まれる不純物のほとんどは、水だったりする。

さて、クエン酸の代表的な不純物としては、水が挙げられます。多くの場合、クエン酸の製造工程終盤では、水から再結晶を行います。

再結晶は高い純度を得やすい精製法ではありますが、いくらかの溶媒(水)が残留することも多いのです。さらに、クエン酸は潮解性があり、空気中の水分を吸収します。こうした背景から、クエン酸は、不純物として水を含みやすいといえるでしょう。

もし、水を多く含むために純度が低いクエン酸があったとして、その純度の低さは有害性につながりません。製品の純度で安全性が決まるわけではないのです。どんな不純物をどのくらい含むかが重要といえます。

医薬品や食品添加物のクエン酸であれば、溶液の着色や不溶物をチェックしたり、重金属、シュウ酸、硫酸塩などの含有量が基準値以下であることが検査されたりしています。

工業用や掃除用などの製品は、上記のような試験が行われているとは限りません。なので、何かしらの有害物質などが比較的多く含まれている可能性を鑑み、食用に使うべきではないのです。
掃除用のクエン酸を口にしてしまったら危ないか?

もちろん、誤って工業用や掃除用のクエン酸を口にして、万が一体調が悪くなった場合は、すぐに医療機関を受診してください。

もっとも、どの規格の製品でもクエン酸の製法自体はほぼ同じです

医薬品や食品添加物のクエン酸では、硫酸カルシウムのような硫酸塩の含有量もチェックされます。

クエン酸の製造工程では、クエン酸を一旦クエン酸カルシウムとして沈殿させ、不純物と分離した後、硫酸で再びクエン酸へと遊離させます。おそらく、その際の硫酸カルシウム混入の可能性を考慮し、検査項目に硫酸塩が設けられています。

硫酸カルシウム自体は、食品添加物としても用いられる、安全性の高い物質です。しかし、水に不溶であり、クエン酸に混入すれば製品の品質を低下させます。

医薬品や食品添加物では、このように、必ずしも有害な物質でなくとも、混入しやすい不純物も検査されています。

「クエン酸100%」と書かれた商品は「純度100%のクエン酸」ではない

クエン酸の中には「クエン酸100%」といった表記のある商品もあります。

この言葉を言い換えれば、「ただのクエン酸です」という意味で、純度を考慮した表記ではありません。「純度100%のクエン酸」は絶対に売られていません

クエン酸に関するネット上の記事やレビューにはしばしば、「純度100%」なのだと誤解して書かれたものもあります。もちろん、一般の人が勘違いしてしまうのも、無理はないでしょう。

しかし、「クエン酸100%」という文言は、化学的観点では特に意味を持たない言葉です。この売り文句を見て、「特に優れたクエン酸なのだ」という印象を持つべきではありません。

ちなみに、「医薬品のクエン酸は純度100%である」という情報も度々見かけますが、これも間違った情報です。

クエン酸の食用は掃除にも使える

クエン酸を飲食物に使うなら、食用(食品添加物)のクエン酸を使うことになります

一方、掃除用であれば、食用のクエン酸を使っても構いません。掃除用でも食品添加物でも、同じクエン酸という物質である以上、汚れを落とす能力は全く同じです。

掃除用クエン酸は粒子が粗く、研磨効果でクレンザーのように使える」という情報も、よく目にします。しかし、掃除用クエン酸が、特に粒子が粗い製品だとは限りません。

例えば、元々は食品添加物規格として製造されたクエン酸が、掃除用として販売されるケースも多いです。掃除用のクエン酸の特徴を一概に決め付けている時点で、信憑性のない情報と言えます。

さらに一言付け加えれば、極めて水溶性の高いクエン酸を研磨剤として使う行為は、そもそも合理的とはいえないでしょう。

性質に差がない以上、なるべく安いクエン酸を選ぶのがおすすめです。では、工業用や掃除用の方が、食品添加物のクエン酸よりも安いかというと、そうとも限りません。

クエン酸は今では、発酵法で大量生産できる物質で、食品添加物規格の製品でも安価です。

筆者の私感としては、ネット通販の食品添加物規格が、もっとも割安で売られている傾向にあると思います。もちろん、掃除用でも良心的価格の製品もあります

クエン酸は、化学的分類としては「純粋な物質」です。規格や、多少の純度差、無水物か一水和物かといった違いを除けば、製品ごとの効果や能力に差はないと考えてよいです。

しかし世の中には、中身はただのクエン酸でも、色んな商品名や売り文句を付けたり、パッケージを工夫したりして、相場よりずっと高く販売している商品もあります。

化学的観点からは、こうした商品の選択は全くもって非合理的であり、大きく損をしています。中身はただのクエン酸なのに、「印象」に余計なお金を払っているのです。

身の回りのものを「物質」として捉える化学的思考は、このように、お得な買い物にも役立ちます。ぜひ、良心的な価格の商品を選んでください。

筆者の考える大まかな目安は、無水クエン酸で「100gあたり100円」がキーワードです。500g未満の製品では100gあたり100円なら割と良心的価格、1kgなどの大容量品では100gあたり100円だと少々割高です。

食品添加物のクエン酸は、価格以外に、調理や飲食物にも使える点でもおすすめです。

「食品添加物のクエン酸(無水)」をネット通販で買うのが、おそらく最もお買い得。

最後に、おすすめのクエン酸(食品添加物の無水クエン酸3つ)を掲載しておきます。

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まとめ・参考資料

食用(食品添加物)のクエン酸は、掃除などにも流用できます。一方、工業用や掃除用のクエン酸は、食用には使えません。

ただし、工業用や掃除用のクエン酸は、安全性が不確かなものの、有害だと決まっているわけではありません。

もし、間違えて掃除用のクエン酸を口にした場合も、「純度が低くて不純物が多く有害」などといった怪しい情報に惑わされないようにしましょう。(もちろん、万一体調が悪くなったりすれば、すぐに医療機関を受診してください。)